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ザックの裏地が劣化!ポリウレタンを剥がす

ザックの裏地が劣化!ポリウレタンを剥がす

ザックが古くなると、内側に施されたポリウレタンの防水加工が劣化してベタベタになり徐々に剥がれてきます。

ポリウレタンが劣化しても、ザック自体はまだまだ使える場合が多いと思いますが、そのままだと、剥がれたポリウレタンが装備品にくっついたりして、非常に鬱陶しくなります。

今回は、劣化したポリウレタンの裏地を実際に剥がしてみましたので、その剥がし方について紹介します。




ポリウレタンの劣化は宿命

登山装備にはポリウレタンを使用しているものがけっこうあります。

ザックの裏地、トレッキングシューズのミッドソール、カッパの透湿性素材などに使用されている場合が多々あります。

古いトレッキングシューズのポリウレタン製ミッドソールが登山中にバラバラになり、ソールが剥がれてしまう事故などは登山者の間ではよく知られています。

ポリウレタンは、空気、水分、熱、紫外線、微生物など様々な要因で劣化します。

劣化は使用環境にもよりますが、概ね5年前後と言われ、大切に使用していても10年を超えたものはいつ寿命が来てもおかしくありません。

ポリウレタンを使用した製品が劣化を起こすのは常識となっていますので、劣化が起きていないか普段から装備品をチェックしておく必要があります。

ポリウレタン製品の寿命を延ばすためには、使用後は汚れを落とす、よく乾燥させるなど、メンテナンスに気をつけることや、湿気の少ない部屋に保管するなどが有効です。(ザックは装備品を入れっぱなしにして保管すると湿気りやすいので、空にして保管する方がベター)

 

裏地の劣化。購入から18年経過したザック

18年目のザック

ポリウレタンは5年程度で劣化するとされていますが、ザックの裏地が5年でボロボロになることはほぼありません。

実際には10年以上経過してからぼちぼち劣化が現れます。

筆者が使用している大型ザックは購入から18年目で裏地のポリウレタンがベトついて、ボロボロと剥がれ出しました。

茶色く変色し剥がれ出したポリウレタンの裏地

17年目まではベトつきはなかったのですが、18年目になって急に剥がれ出しました。

裏地のベトつきや剥がれは徐々に起こるのではなく、急激に起こるようです。

裏地のポリウレタンが剥がれても、生地やベルト類の強度はまだまだあります。

劣化したポリウレタンを剥がすとザックの防水性はなくなりますが、防水性がないからと言ってザックが使えないということはありません。

昔のザックは木綿製で防水などされていませんでした。

ザックや装備品は濡れないよう工夫すれば良いのです。

劣化した裏地はベトついて不快なので、きれいに裏地を剥がしてみることにします。



劣化したポリウレタンの剥がし方

手で剥がす

では実際にポリウレタンを剥がしてみます。

まずは、手で取れるものは取ってみます。

ウエスで擦ったりしながら、できる範囲でポリウレタンを剥がします。

擦って剥がしてみる

あまり乱暴に扱うと生地を傷めますので気をつけます。

まだ劣化が始まっていない部分もありましたので、その部分は無理に擦らないようにします。

手で剥がす作業は効率が悪く、相当頑張ってもきれいに剥がすことはできませんので、適当なところで止めます。

重曹を使う

重曹を溶かしたぬるま湯にザックを漬け置きして、ポリウレタンを剥がします。

家庭用の重曹

重曹(炭酸水素ナトリウム)は料理や山菜のアク抜き、食器の汚れ落としや衣類の洗濯などに使用されます。

ドラッグストアーなどで手に入ります。(1kg500円程度です)

アマゾン 重曹(炭酸水素ナトリウム)950g 食品添加物
楽天   重曹(炭酸水素ナトリウム)950g 食品添加物

重曹を使った剥がし方

今回行った方法は以下のとおりです。

・ザックを分解して、フレームなど関係のない部分は取り除きます。ファスナー類は開放しておきます。

フレームなど余計なものを外し、ファスナー開放


・お風呂の浴槽などにザックが浸かる程度のぬるま湯(重曹は冷水には溶けづらい)を張り、重曹を適量投入し、かき混ぜます。(重曹の分量については諸説ありますが、筆者の場合、ぬるま湯20Lに重曹約300gを入れました)

ぬるま湯に重曹を投入し、かき混ぜる


・ザックを入れて、ひと晩漬け置きします。

ザックを漬け置きする

翌日の様子

・漬け置きから引き上げる前に、ザックの裏地を手で揉んだり擦ったりして、剥がれかけのポリウレタンをよく落とします。(劣化していない部分のポリウレタンは剥がれません)

水はにごり、ポリウレタンのカスが沈んでいる

・漬け置きが終わったら、重曹の成分や残りかすを落とすため、浴槽ですすぎ洗いをするか、洗濯機を使用してよくすすぎます。

洗濯機などでよくすすぐ


・すすぎ後、乾燥させます。

乾燥後、すすぎ切れなかったポリウレタンのカスがザックに付着していますので、よく払い落とします。

(※丸洗いが禁止となっているザックがそこそこあり、上記の方法でポリウレタン剥がしを行うのは、自己判断ということになります。

個人的な意見としては、裏地が劣化してザックを買い替えるのなら、ダメもとでポリウレタン剥がしを行ってみても良いのではないかと思います。ちなみに、今回ポリウレタン剥がしを行ったザックは、丸洗い禁止となっていますが、その後も問題なく使用しています。)

 

重曹でポリウレタンを剥がしてみた結果は?

ザックの縫い目など、ポリウレタンが剥がれにくい場所を除いて概ねきれいに剥がれ、表面のベタベタはなくなりました。(下の写真参照)

ビフォー

アフター

ビフォー

アフター

ビフォー

アフター

ザックの生地が少し傷むのではないかと心配しましたが、生地が傷んだり変色したりすることはありませんでした。

ただ重曹は、お洗濯のやわらか仕上げにも使用されるということで、ザックの生地が若干やわらかくなってしまいましたが、使用上影響がない程度だと思います。

重曹を使用して、劣化したポリウレタンを剥がす方法はとても簡単で効果的でした。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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