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元山岳部部長の登山講座

0からはじめる登山。初心者のための簡単マニュアル(準備~実戦編)

0からはじめる登山。初心者のための簡単マニュアル(準備~実戦編)

今回は「初心者のための簡単マニュアル(準備編)」の続き、登山の服装、持ち物と実戦編について説明していきます。




服装(登山ウエア)

意外に服装は悩むところです。

細かくいえば切りがありませんが、ざっくり言うと、上半身は肌着、中間着、防寒フリース、ウインドブレーカーの順に重ね着します。

登山中は肌着と中間着のみで歩き、寒さを感じた時にフリースやウインドブレーカーを着て体温調整をします。

下は動きやすいズボンか、最近はトレッキングタイツ+短パンも多くなりました。

基本的な山の服装については以下のとおりです。

・肌着(ベースレイヤー)

肌着はTシャツで材質はポリエステル製のものが良く、なければ木綿と化繊の混紡のものやメッシュTシャツでも良いでしょう。
綿100%に近いものはなるべく避けて下さい。

木綿はほかの材質とくらべると、汗で濡れると乾きづらく、保温性がありません。

はじめから登山用の肌着を用意したいのなら、吸水、速乾、保温性の三拍子を備えたベースレイヤーやTシャツが各メーカーから出ています。

・着替え

汗冷えが激しい時などのために替えのTシャツ(木綿でないもの)が1枚あると便利です。

・中間着(ミッドレイヤー)

中間着もボリエステル製が良く、やはり木綿製はなるべく避けてください。

とりあえず着るならジャージの上着か、極薄のフリースがあればそれでも良いでしょう。

登山用の中間着を買うのならポリエステル製で吸水、速乾、保温性のあるものが登山用中間着としてたくさん出回っています。

また、チェック柄のポリエステルやウールのカッターシャツも少数派となりましたが、登山用としては適しています。

どのタイプも大きな性能の差はありませんので好みで選べば良いと思います。

また、シーズンを通して登山をするのなら(雪山を除きます)、中間着は真夏用の薄いもの、寒い季節用の厚いもの、二種類が必要になってきます。

・フリース(セーター)

防寒フリースは汗冷えして寒い時などに着るものです。

エマージェンシー的な要素もありますので、いくら天気が良くても必ず持って行きましょう。

具体的には冬に着るようなユニクロのフリースやセーターが適しています。

・ウインドブレーカー(ヤッケ)

ウインドブレーカーも汗冷えして寒い時などに着るもので、中間着の上に着ることもあれば、フリースを着ても風を通して寒い時にフリースの上に着ることもあります。

ウインドブレーカーもエマージェンシー的な要素があります。

具体的には、ナイロン製のヤッケなどツルツルして軽くて、風を通さないものならなんでも代用できます。

ウインドブレーカーを雨カッパの上着で代用しようとすると、汗で蒸れて服が濡れてしまいますが、透湿性のあるゴアッテックス製などの雨カッパなら蒸れづらいのでウインドブレーカーのかわりに使用することができます。

・ズボン

ズボンは腿や膝に余裕のあって、伸縮性のある動きやすいものならなんでも良いと思います。

やはり、木綿率の多いものは適していません。

作業ズボンやジャージ、もう着なくなったお古のウール製スラックスでも良いでしょう。

登山用ズボンはポリエステル、ポリウレタン、ナイロンなどの複数素材でできた、吸水、速乾、保温性のあるものが売られています。

トレッキングタイツはテーピングやサポーター効果があり、足腰の負担軽減に役立ちます。ズボンより涼しいという理由で主に真夏に適していると言われていますが、転んだりした時はズボンの方が丈夫ですし、真夏でもズボンじゃ暑すぎるということはありません。

ズボンにするのかトレッキングタイツにするのかは好みで決めることになります。

・帽子

日よけや頭部の保護のために帽子をかぶります。

スカーフを頭に巻いても良いと思います。

帽子はなんでもかまいませんが、あまりつばの広いものは視界が狭く、枝や岩に頭をぶつけやすいでしょう。

また、風で飛ばされないようあごひもやゴムがついているものが良いでしょう。

登山用として売られているものもありますが、普通の帽子とくらべて登山用として特別に優れているということはありません。

・手袋

手袋をしましょう。

急な場所では木の枝や岩を掴んだりしますし、転んで地面に手をつくこともあります。

登山用グローブというものも売っていますが、軍手でかまいませんので怪我防止に手袋をしましょう。

 

服装の詳細や重ね着(レイヤリング)については、「登山の服装選びの基本1」「登山の服装選びの基本2」に詳しく掲載しています。



持ち物(装備)

・昼食

おにぎりやサンドイッチとなど食べやすいものが適しています。

お弁当でもかまいませんが、悪天強風下では食べづらいので注意して下さい。

・行動食

飴などの糖分、塩飴、飲むゼリー、カロリーメイト系、ソーセージ系、果物、甘いお菓子など、食べやすいもが良いでしょう。

チョコレートは溶けますので、注意が必要です。

・非常食

道に迷うなど、万が一下山が遅れた場合のために、非常食を持って行きます。

行動食をやや多めに持って行けば非常食にもなります。

山の食事については「登山と山の食事」に詳しく掲載しています。

・水筒

コースの長さや気温によって1.5~3リットルの水を持って行きます。

なければペットボトルでもかまいません。

登山用の水筒はナルゲン製品などポリカーネ―ドのものが主流です。

・雨具

100円カッパではなく、上下セパレートのカッパを用意します。

ホームセンターなどに売っているものでもかまいません。

高価ですが、ゴアッテックス製のものは蒸れないですし、ウインドブレーカーとも兼用できます。

・タオル

汗拭き、日よけ、ウエス、包帯がわりなど汎用性がありますので1枚は持って行きましょう。

・携帯電話

登山で携帯電話は非常用無線機と同じ意味ですから、必ず持って行きましょう。

最近では、スマホに地形図アプリを入れることで、ハンディGPSと同様、正確な現在地を知ることができ、道迷い防止に役立ちます。

特にスマホは電池の消耗が激しいので使用以外は電源を切るなどして万一のために備えましょう。

・ポケットティッシュ

トイレ用、その他必要分持って行きましょう。

・ヘッドランプ

アクシデントで明るいうちに下山出来なくなった時のために持って行きます。

ヘッドランプがなければ、とりあえず小型のLEDライトでもかまいません

・メモ帳、筆記用具

次回登山のためにコースタイムなどを記録します。

・小型ナイフ

折りたたみの小さいナイフが1本あるとアクシデント発生時に役立ちます。

・クマよけ鈴、ホイッスル

クマの出没が心配な山域では持って行った方が安心です。

・靴ひも予備

新品だと靴ひもが切れることはありませんが、使い込んでくると登山中に締め直した時に切れることがあります。

・1/25000地形図

初心者のうちから地形図に慣れておきましょう。

だんだん読図ができるようになります。

地形図はマップケースやジップロックに入れるなど防水をしましょう。

地形図やコンパスについては「地形図を登山に持って行こう」「地形図の読み方」「地形図の実戦的使用法1」「地形図の実戦的使用法2」に詳しく掲載しています。

・コンパス

地形図とセットで使用します。

オリエンテーリング用コンパスが適しています。

・火器

非常時のために、マッチまたはライター1個を用意します。

ジップロックなどに入れ防水します。

・予備電池
携帯の充電器、乾電池などバッテリー切れが不安な電気製品の予備電池を適量持っていきます。

・布ガムテープ

登山靴が壊れた時や、その他応急用に。

大きい物は重たいので、メートル数の少ない小さめのものが良いでしょう。

・小型ビニール袋

ゴミ袋などに使用します。

・医薬品(ファーストエイドキット)

怪我や靴ずれその他のアクシデントに備え、バンソーコ、テーピングテープ、胃腸薬、痛み止め、持病薬など、必要最小限度持っていきます。

 

その他にも以下のようなものがあり、必要に応じて持って行きます。

・登山用ストック(トレッキングポール)

足腰や持久力に自信がない人はバテた時には頼りになります。

・サプリメント

体力に自信のない人はバテ防止にアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどのサプリメントが効果を発揮します。

サプリメントについては「バテない登山をめざせ」に詳しく掲載しています。

・マーキングテープ

道迷い防止に道しるべとして使用します。

ピンクや水色のものが売っていますが、色つきビニールテープでも代用できます。

ビニールテープは装備の修理用としても使えます。

・高度計

高度計があると、現在地が特定しやすくなります。

まだ地形図の読図になれていない人にも便利なグッズです。

高度計の必要性については「登山と高度計」に詳しく掲載しています。

・ラジオ

天気予報などの情報収集に。

・ツエルト(ビバーク用簡易テント)

アクシデントで下山出来なかったときのために、緊急露営するための簡易テントです。

原則パーティーに1個は必要な装備です。

・GPS専用機

スマホの地形図アプリでもGPS専用機と同様の正確さがありますが、スマホでは操作がしづらいと感じている人には、GPS専用機が良いと思います。

GPSに興味がある方は「登山とGPS」に詳しく掲載しています。

・修理工具

アクシデントに備え、簡単な工具を持って行きます。

ペンチ、適宜の長さの針金、ミニドライバーなど。

・クマよけスプレー

クマが至近距離に接近してきた場合の手段として有効です。

クマよけスプレーの有効性やヒグマについてもっと知りたい方は「登山と要注意動物(ヒグマ編1)」「登山と要注意動物(ヒグマ編2)」に詳しく掲載しています。

・細引き

径5mmくらいの細い雑用ロープ4~5mがあると、いざという時にいろいろな用途に使えます。

・アマチュア無線ハンディ機

免許が必要です。緊急時に携帯電話が使用できない時の連絡手段です。

・毒吸いポンプ(ポイズンリムーバー)

スズメバチなどに刺された時に患部から毒を吸い出します。

スズメバチについてもっと知りたい方は「登山と要注意動物(スズメバチ編)」に詳しく掲載しています。

・山ナタまたは登山ナイフ

最近はこれを山に持っていく人はほとんど見ませんが、枝を切ったり様々な用途に使用します。

・ミニ裁縫セット

衣類、ザックなどが破損したときの応急修理に役立ちます。

・携帯トイレ

使用が義務化されている山もありますので、トイレ情報について事前に調べておく必要があります。

 

持ち物は、複数で登山をする場合にはパーティーに1個あればよい物もあります。

このような持ち物を共同装備と呼び、テントやツエルト、ラジオなどが共同装備にあたります。

それに対し、全員が持って行く持ち物は個人装備といいます。

持ち物の基本的な考え方については「夏山装備(日帰り編)」に詳しく掲載しています。



実戦編~はじめての登山に挑戦

はじめての登山は天気予報をよく確認して必ず晴れた穏やかな日にしましょう。

いよいよ登山をする日が決まったら、前日はザックに装備(持ち物)を詰めて、早めに寝ましょう。

睡眠不足は登山の敵です。

たっぷり睡眠をとってください。

パッキング

ザックに持ち物を詰めることをパッキングといいます。

装備が少ないと、どのようにパッキングをしても大差はでませんが、装備が多くなればなるほどパッキングが下手だとザックが重く感じたり、疲労が多くなります。

パッキングについて簡単に説明すると、
・装備品の重さが左右均等になるように詰める
・重たいものは背中の真ん中付近に詰める
・重たいものは背中に近い場所に詰める。
・使用頻度の高いものはザック上部など、すぐ取り出しやすい場所に詰める。

この4つが原則になります。

パッキングする時は持ち物チェックも兼ねて行います。

登山ではひとつの忘れ物が命取りになる場合があります。

忘れ物をしないよう、よくチェックをしましょう。

パッキングについてもっと知りたい方は「パッキング」の項を読んで下さい。

トイレ

出発したら、登山口に一番近いトイレで用を済ませておきましょう。

途中のコンビニで昼食を買うついでにトイレに入ったり、登山口や山中にトイレがある場合もあります。

事前に情報収集しておきましょう。

登山口についたら

登山口に着いたら、靴ひもをしっかり締めます。

極端な締めすぎは、血行が悪くなり足が痛くなることがあるので注意して下さい。

ザックをもう一度チェックしましょう。

バックルやファスナーが開いたままになっていないかなど、仲間のザックや装備も見てあげましょう。

ザックを背負ってしまうと本人は不備に気づいていないことがあります。

クルマで来た人は、施錠、窓、ヘッドライトの消灯を確認、車内への忘れ物の確認をし、車内に貴重品を置かないようにしましょう。

登山口の駐車場をねらう車上荒らしがいますので、十分注意してください。

屈伸など軽く準備運動をしたら、入山ボックスに記名していよいよ登山開始です。

歩行スピード

歩行スピードは複数登山ならリーダーがメンバー全体の疲労度を見ながら調整しますが、基本的な歩行スピードは息が上がらない程度にし、歩幅は小さく、呼吸を乱さないようにゆっくりとリズムよく歩きます。

歩行中は脈拍140回/分以下が目安です。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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