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元山岳部部長の登山講座

20年目で引退のプラブーツ スカルパベガ新旧比較!

かつて流行した冬山用の登山靴、プラスチックブーツは、下火になった現在でも一部の登山者に根強い人気があり、スカルパのベガは、現在でも新品が販売されています。

今回は、購入から20年目で寿命を迎えたスカルパベガと、新品で購入したスカルパベガを比較してみます。




なぜ未だに売っているのか?プラブーツの長所と短所

プラブーツは、プラスチック製の靴と暖かいインナーシューズの二重構造になっていて、防水性と保温性がとても優れています。

材質がプラスチックということで、使用後は汚れを落とし、乾燥さえさせておけば、メンテナンスはほぼ必要ありません。

また、靴の硬性が高く、靴紐をきつく締めると足首がそこそこ固定されますので、山スキーにも適しています。(※平成24年以降、プラブーツを装着できるスキービンディング、ジルブレッタ500は販売が終了してしまいましたので、現在はプラブーツではスキーはできません)

スカルパベガと登山靴に装着可能なビンディング ジルブレッタ500

一方で、プラブーツは、硬くて歩きづらい、足首が曲がらない、といった欠点のほか、プラスチックの経年劣化で突然破壊するという事故が度々報告されていて、プラブーツの人気が低迷した大きな原因のひとつになっています。

プラブーツは現在の主流である、革製や特殊な化学繊維を使用した冬山用登山靴に押され、ほぼ姿を消しましたが、防水性と保温性が高いということで、一部のオールドファンから未だに支持されています。

一昨年まで、スカルパ、コフラック、ローバのプラブーツが市場に出回っていましたが、昨年中(令和元年)にコフラックの販売が終了しましたので、現在プラブーツと言えば、スカルパベガ、ローバチベッタエキストリームくらいになると思います。

コフラックが撤退する中、プラブーツのユーザーがこれ以上減れば、プラブーツが絶滅してしまうのではないかという心配もあります。

スカルパベガを扱っている山の専門店、札幌秀岳荘の販売員に、スカルパベガの売れ行きなどについて尋ねてみましたが、「オールドファンらしいお客様にぼちぼち売れる」ということで、プラブーツのメリットを知っている登山者がまだ現役で冬山を登っているということなのだろうと思います。

今回は悩んだ挙句、再びスカルパベガを購入しましたが、筆者は登山靴用のスキービンディング(ジルブレッタ404、500)を現役で使っているので、山スキーにも冬山登山にも使用できるプラブーツという選択肢になりました。

次回の買い替えの時には、たぶんプラブーツは完全に消滅しているのではないかと思います。



プラブーツの寿命は通常5年程度。なぜ19年も使用できた?

プラブーツは経年使用でプラスチックが劣化し、新品から5年以上経過したものは、突然破壊を起こす危険性があります。

5年も経たずに壊れる例もあれば、10年以上使用しても大丈夫な例もあり、プラブーツの寿命を左右するのは、その商品が持っているもともとの耐久性や、使用頻度、メンテナンスなどの差に原因があると考えられています。

プラブーツの突然破壊の詳しい原因は未だに解明されていませんが、紫外線や湿気による説、メーカーの材質調合の割合による説、バクテリアによる説、泥による酸化など諸説あります。

今回筆者が購入したスカルパベガの取説には、プラブーツの寿命について、「紫外線や湿気による影響で破損しやすくなる。通年使用で3年以内、12月~5月の週末だけの使用で5年以内が目安」と記載されています。

また、メンテナンスについては「使用後は汚れを落とし、直射日光を避けて乾燥させ、日光の当たらない涼しい場所で保管」と書いてあります。

スカルパベガの取説の一部

今回引退させたプラブーツ、スカルパベガは平成12年(2000年)に購入し、令和元年(2019年)まで、年に5回程度の登山(北海道の1500m級以下の山のみ)に使用し、使用後はよく乾燥させ、湿気の少ない部屋で保管していました。

購入から5年経過した時点では、破損や材質の劣化はまったく見られませんでしたので、10年を目安に買い替えようと思っていましたが、購入から7年目に滑落事故で怪我をして以降、1000m級の低山にしか行かなくなりましたので、靴が突然破壊しても何とかなるだろうと思い、買い替えずにそのまま使用していました。

購入から15年目でプラスチックの表面がやや白っぽくなってきましたので、そろそろやばいと思いながら慎重に使用していましたが、購入から19年目の令和元年(2019年)のシーズンの終わりに「さすがに20年超えはやめておこう」と思い、20年目は引退させ、新しい靴を買うことにしました。

実質の使用年数は19年、使用回数は100回程度になると思います。

このように、スカルパベガに関しては、極端にハードな使い方をせず、正しいメンテナンスを行い、良好な場所で保管していれば、20年程度は使用できる場合もあるということです。



ほぼ変わらぬ品質。20年目で交代した新旧のスカルパベガを比較

平成12年(2000年)に購入し、19年間使用したスカルパベガと、令和元年に購入した新品のスカルパベガを比較してみます。

新しい靴(左) 古い靴(右)

新しい靴(左) 古い靴(右)

新しい靴(左) 古い靴(右)。現行モデルは踵のストラップが省略されている。

古い方の靴は、プラスチックが白っぽくなっていますが、ひび割れなどの破損はありません。

新しい靴。黒くて光沢がある。

古い靴。表面が白っぽく変色。

外観の比較ですが、デザインや質感に違いはありません。

変更点が1つあり、シェルのかかとの内側に付いていた短いストラップは、現行品ではなくなりました。

インナーシューズを履いたまま足をシェルに突っ込む時に、このストラップがあると、かかとがスムーズに入り易かったのですが、どのような理由でなくしたのかはよくわかりません。

新しい靴(上) 古い靴(下)

ほとんど雪の上しか歩きませんでしたので、19年使用した割にはあまりソールが摩耗していません。

ソールの形状に変更はなく、同じ型番のビブラムソールのようです。

新しい靴のシェルの内側。

古い靴のシェルの内側。かなり白っぽい。

シェルの内側も変更点はないようです。

古い靴の内側のプラスチックはかなり白くなっていますが、摩耗や破損は見当たりません。

次にインナーシューズを見てみます。

新しい靴(左) 古い靴(右)

新しい靴(上) 古い靴(下)

新しい靴(左) 古い靴(右)

新しい靴(上) 古い靴(下)

外観ですが、デザインや質感に違いはありません。

ソールの縁が剥げている。

古い靴は全体に摩耗があり、ソールの縁が剥げていましたが、それ以外に大きな損傷はありませんでした。

新しい靴の内側。インソールは灰色に

古い靴の内側。白いインソール。

インソールですが、色だけ変更されているようです。

新旧のインソールを触ってみると、両方とも質感に変わりはなく、われものを梱包する時に使う柔らかい発泡を厚くしたような材質です。

新旧のスカルパベガを比較してみましたが、材質、形状共に大きな変更点はなく、今までどおり違和感なく使用出来そうです。



購入時の注意点。プラスチック製品についている刻印(製造年月)を必ずチェック!

スカルパベガのシェルの内側には、「デートマーク」の刻印があります。

シェルの内側にある円形のデートマーク。

2014年10月製造と見られる。

デートマークは、おもちゃやポリ製品、プラスチック製品などで見られ、メーカーが品質管理などのために製造年などを製品に刻印したものです。

デートマークには種類があり、年月を表すものや、年月日を表すもの、また固有番号を表すものなどがあります。

今回購入したスカルパベガには、上の画像のようなデートマークがあり、右の円の数字が年、左の円の数字が月を表すものと思われます。

この靴は2019年11月に札幌秀岳荘白石店で購入したものですが、刻印の解釈が正しければ2014年10月製なので、製造から5年経過していることになります。

購入時はお店を信頼し、製造年をよく確認せずに買ったのですが、5年経過しているのが本当なら、使う側からすればかなり微妙な話です。(後日お店に問い合わせようと思います。)

プラブーツをはじめ、登山用品の中には、使用しなくても徐々に劣化するもの(登山靴のポリウレタンソールやヘルメットなど)がありますので、製造年がわかる物については購入前にチェックしておく必要があると思います。






プロフィール

フリーライター。元船員、航海士。
学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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