10Mar
先日登山中に、スノーシューのビンディング(バインディング)のウレタン部分が経年劣化でバラバラに崩壊してしまいました。
今回はビンディングの破損状況と応急処置、交換や修理について考察していきます。
登山中、ビンディングがバラバラに
このスノーシューは14年前(平成18年、2006年)に購入した、「MSRライトニング」です。
アマゾン MSRスノーシュー ライトニングアッセント
楽天 MSRスノーシュー ライトニングアッセント
2年前にベルト(ストラップ)が経年劣化で切れてしまったため、ベルトを交換して使用していました。
交換したベルトは純正品ではなく、ホームセンターで買った荷締め用ベルトを代用しました。
(詳細については「スノーシューのベルト交換~代用品を試す!」「スノーシューのベルトが切れたら」を読んでみて下さい。)
アマゾン 4本セット 荷締めベルト 幅20mm 長さ2M
楽天 4本セット 荷締めベルト 幅20mm 長さ2M
ところが、ベルト交換してから2年目の今年の2月、樽前山を登山中に突然ビンディングのウレタン部分が切れてしまい、細引きや荷締め用ベルトで応急処置して登山を続けたのですが、その後もウレタンの破損は続き、ビンディングがバラバラに崩壊してしまったのです。
出発前に、自宅で装備品を準備している時に、ビンディングのウレタン部分が去年より硬くなったような気がしていたのですが、ひびなどはありませんでした。
本当はこの時に登山靴に一度装着してみて強度を点検していれば、ビンディングの破損を予見出来ていたのではないかと思います。
とりあえず応急処置して登山続行
ビンディングのウレタン部分が崩壊しましたが、ビンディングの土台は丈夫な金属製ですので、登山靴とビンディングを固定さえ出来れば、なんとか歩くことが可能です。
撤退を考えましたが、折角来たので使えそうなものを使用して靴に固定してみます。
ベルトは純正品ではなく、長めの荷締め用ベルトを使っていたので、まずはこの荷締め用ベルトで登山靴とビンディングを固定してみます。
しかし、歩いているうちにビンディングの崩壊が徐々に進んで緩んできました。
荷締め用ベルトに加え、細引きでしっかり固定すると、下山まで何とか耐えることができました。
下山後にビンディングの破損状況を確認してみます。
ウレタン部分はバラバラで、原形をを留めていません。
ビンディングの土台の金具だけは破損もなくしっかりしています。
劣化したウレタンは一度破損が始まると一気に崩壊してしまうことがわかります。
ビンディングの寿命は10年程度
このスノーシューの使用履歴ですが、
- 14年前に購入→毎年概ね3~8回使用→2年前にベルト破損、交換→今年ビンディング破損
ということで、筆者の使用環境では、ベルトの寿命は12年、ビンディングの寿命は14年という結果でした。
結論から言うと、使用環境や保管の状態にもよりますが、購入から10年を超えると、ベルトもビンディングもいつ寿命が来てもおかなくないということがわかりました。
ベルトが経年劣化で切れたら、間もなくビンディングも寿命が来てしまうので、安全を考えればベルトが切れたタイミングでビンディング交換を検討するのが良いと思います。
アマゾン MSRクラシックストラップ12インチ甲側
アマゾン MSRクラシックストラップ18インチ ヒール側2本セット
yahoo MSRクラシックストラップ18インチ ヒール側2本セット
アマゾン 汎用交換ベルトセット M.walkスノーシュー固定バンド
交換用ビンディングを買わず、壊れたビンディングを改造して使用できるのか?
スノーシュー本体はまだ十分な強度を保っているので、ビンディングを交換すれば、次の10年間は問題なく使えそうです。
しかし、その前に、壊れたビンディングはどうせ捨てる運命ですので、ダメもとでビンディングを加工して再利用できるかどうか挑戦してみることにします。
ビンディングは金属製の土台にウレタンパーツが固定され、ウレタンパーツにベルトが取り付けられています。
金属製の土台は破損していませんので、この土台を加工して登山靴に取り付けられるかどうかやってみることにします。
ビンディングは、左右2本のピン(クレビスピン)で止まっています。
クレビスピンは、ピン、ワッシャー、リングの3つのパーツで出来ていますが、マイナスドライバーやラジオペンチなどを使って、リングを取り外せばピンは簡単に抜けます。
ウレタンパーツはリベットで固定されているので、電動ドリルでリベットを取り外します。
このリベットの穴にロープ(6mm)を通して、登山靴に固定したいのですが、穴の径が5mmと小さいので、電動ドリルで穴を広げます。
穴をあまり広げ過ぎると、強度が心配です。
6mmのロープを通すので、穴の径は8mm程度が良いのですが、ドリルの刃が10mmしかなかったので、穴は10mmにしました。
金属製の土台は適度な厚みと強度があるので、10mmくらいまでなら何とか大丈夫そうです。
ビンディングをスノーシューに取り付けます。
この穴に、6mmのポリエステルロープを通して登山靴に固定するのですが、固定の仕方は、昔のわかんの縛り方をヒントにすれば何とかなりそうです。
ロープはビンディングの穴との摩擦で切れる可能性があるので、擦れる部分にビニールテープなどを巻くか、ビニールホースをロープに通して擦れ当てをすることにします。
ロープは3本に分けてビンディングに通してみました。
縛り方は幾通りもありますが、今回は、まず真ん中のロープを蝶結びなどで縛り、次に先端のロープでつま先を一旦締めてから、かかとのロープの輪に通して締め上げ、最後は蝶結びで縛りました。
とりあえずはガタつきもなく、意外にしっかりと固定出来ています。
後は、実際の雪山で使用してみて、不具合がないかどうかを確認して、良ければ実戦投入、ダメなら交換用ビンディングを購入することになります。
改造スノーシューを雪山で使用してみる
改造したスノーシューは、前回と同じ樽前山で使用してみました。
登山口から往復約6時間の行程をスノーシューだけで歩きましたが、途中で若干のロープの緩みを感じたので、1回だけロープを締め直した以外は、問題なく使用できました。
本物のビンディングと比較すると、本物のビンディングはブーツが遊ばないよう、ソールが接する部分のウレタンにイボイボが付いていますので、一度ベルトを締めるとブーツがずれることはありませんが、改造ビンディングは、平らなビンディングにロープを取り付けただけなので、ロープをきつく締めてもブーツに若干の遊びが出来ます。
上の写真はビンディングとブーツに遊びが出来ている状況ですが、ブーツが左に1cm程度ずれています。
この遊びが、歩きにどう影響するのかが実験のポイントです。
まずは平地でのテストですが、ブーツの遊びはまったく気にならず、何ら問題なく使用出来ました。
次に、斜面でのテストです。
MSRスノーシューのライトニングシリーズは斜面でのフリクションが非常に高いことで知られており、アイゼンが必要な場面でも少々の斜面ならスノーシューを脱がずに歩くことが出来ます。
クラスト斜面などのタイトな状況でも安全に使用できるのかどうかが一番心配でしたが、硬いクラスト斜面を歩いてみた結果、登り、下り、トラバース共にブーツの遊びは特に気になることはなく、歩きに影響は出ませんでした。
今回のビンディング改造の評価は以下のとおりです。
- 良い点
- ウレタンを使用していないので経年劣化でいきなり破損する心配がない。
- ロープなので劣化の状況がわかりやすい。
- 費用が安い。
- 悪い点
- ベルトに比べブーツを固定するのに時間がかかる。
- ロープなので緩みが出る。
- ビンディングとブーツに遊びが出来る。
- ビンディングの加工(穴あけ作業)にやや手間がかかる。
筆者の総合評価では、実用上は一様合格点だと思います。
斜面など、危険箇所を通過する前に緩みの状態を点検するなどすれば、問題なく使用出来ますが、ブーツの遊びが気になる場合やロープの扱いが苦手な場合には、純正品のビンディングへの交換ということになると思います。
今回は交換用ビンディングは買わず、しばらくはこれで頑張ってみようと思います。
- 冬山装備関連記事
- スノーシューのベルトが切れたら
- スノーシューのベルト交換~代用品を試す!
- 20年目で引退のプラブーツ スカルパベガ新旧比較!
- 冬山登山に山スキーは絶滅したか?
- 古いスキーブーツは本当に壊れる 60年前のわかんを復活させる
- スキーのシールは自作出来るのか?
- 古いスキーゴーグルのスポンジ交換!
- 冬山入門 冬山入門2 冬山入門3
- 冬山とアイゼン~選び方と使い方 ピッケルの種類と選び方
- 冬山。スノーシューの選び方と使い方
- スノーシュー、わかん、アイゼン~どんな時に使うのか?
- 雪崩対策!雪崩ビーコンの選び方
- 登山用GPSの選び方~専用機?スマホ?
- 冬山登山の服装は? 冬山の寝袋(シュラフ)の選び方
- 冬山のテント生活のコツ。冬山用テントと竹ペグ
- 冬山のテント生活のコツ。雪上にテントを張る
- 冬山のテント生活のコツ。テント生活のあれこれ
- 冬山~雪洞の作り方