14Mar
冬山登山の服装は?
冬山登山にはどんな服装を用意すれば良いのでしょうか?
今回は積雪期登山の服装について説明していきます。
冬山の服装を用意する期間
冬山の服装を着用する期間は、山の標高にもよりますが、高い場所で確実に0℃を下回る時期は冬山の服装を用意または着用して登山をすることになります。
初冬の山や春山の暖かい日には冬山の服装がいらないと思われる時もありますが、低気圧が来ると山は真冬と同じ状況になります。(参考記事~「またか?大雪山旭岳4人遭難~事故を分析」)
真冬じゃない季節には油断が生じますので、軽装で入山し、遭難してしまう事故は毎年のように起こっています。
高所で吹雪になる可能性のある時期は、基本的に真冬と同じ服装を用意して、不意なアクシデントに備える必要があります。
アウターやフリースなどは、暑ければ脱いでザックにしまえば良いだけなので、吹雪かれる可能性のある時期は、いくら天気が良くても面倒がらずに真冬と同じ服装を用意するのが基本になります。
冬山の服装とは
アウターはハードシェル上下(ヤッケとオーバーズボン)、中間着(ミッドレイヤー)はウールやポリエステルのもの(厚手~中厚手)、肌着(ベースレイヤー)はウールやポリエステルのもの(厚手~中厚手)を着用します。
また、最近では肌着の下にドライレイヤーと呼ばれる薄いシャツを着て汗冷えを防止するのが主流となりつつあります。
このほかに、防寒用としてフリースやセーターを2枚程度用意しておきます。
小物としては、目出し帽、ネックウオーマー、防寒手袋、オーバーミトンなどが必要で、靴下は1枚という人もいますが、大概2枚重ねになります。
登山靴の上にはロングスパッツ(ゲイター)を着用します。
次にそれぞれの服装について具体的に説明していきます。
アウター
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冬山では、「ハードシェル」と呼ばれる防水透湿性のアウター上下を着用するのが主流です。
ハードシェルとは簡単にいうと、ゴアテックスなどの透湿性のカッパを厚く丈夫にして裏地をつけたようなものです。
ハードシェルは防寒、防風、防水、透湿性があり、冬山のアウターとしてはとても優れています。
ハードシェルには生地の中間に保温材(中綿)が入っているものと入っていないものがありますが、登山では通常中綿なしのものを着用します。(中綿が入っていると行動中、暑すぎるため)
かつて冬山の主役であったヤッケとオーバーズボンは、ただの厚いナイロン生地でしたので、現在のハードシェルに比べると通気性は抜群で、暑くなりづらく、行動中はとても快適でしたが、防水性がありませんでしたので、ラッセルなどをすると、たちまち生地は水気を吸い、翌朝はバリバリに凍結する状態でした。
ハードシェルはゴアなどの防水、透湿素材を使用しているので、雪や氷に濡れながらも内側は大汗をかく冬山には打ってつけのアウターなのですが、通気性はかつてのナイロン製ヤッケより劣ります。
冬山のアウターとしては、ハードシェルではなく、ソフトシェルを着用するという考え方もあります。
ソフトシェルは防寒、防風性、通気性がありますが、防水性はなく、昔のナイロン製ヤッケとやや似た特徴があります。
防水性がなくても、通気性が良い方が行動中は汗だくになりづらく、快適だということです。
なお、ソフトシェルの弱点である防水性を補うために、雪や氷で濡れるような場面ではソフトシェルの上に薄いゴアテックスのアウター(いわゆるゴアのカッパ)を着用するというような考え方もあります。
冬山のアウターをハードシェルにするのか、ソフトシェルにするのかは、登山者のレイヤリングの考え方によるところが大きいのですが、雪による激しい濡れがほとんど想定されないような日帰り登山ではソフトシェルが快適でしょうし、ラッセルや雪洞掘り、泊を伴う登山などでの場合、アウターはけっこう濡れますので、ハードシェル上下を着用するのが一般的でしょう。
中間着(ミッドレイヤー)
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中間着(行動着)のラインナップは非常に多く、メーカーのカタログを見てもわかりづらいという印象です。
中間着はかつてはウールのカッターシャツが主役でしたが、現在は登山用フリース(ポリエステル製)で適度な厚みものが好まれています。
登山メーカーが冬山用中間着としているものには、登山用フリースのほかに、夏山で防寒用として着用されるソフトシェルなどもあります。
冬山では登行中はどんなに寒くても背中は汗でびしょ濡れになるものです。
このため、行動中は気温が低すぎる時や風が強い時以外はアウターの上を脱いで中間着(行動着)だけで行動する場合が多くあります。
ですので、中間着は薄すぎても寒いですし、あんまり分厚くても汗をかきすぎるという難しいところがあります。
中間着の厚さは、下に着るベースレイヤーの厚さにもよりますが、暑がりの人ほど薄いものを、寒がりの人ほど厚いものを好む傾向があり、それぞれが快適に行動できる厚さを選ぶことになりますが、フリースであれば一般的には「厚手」のもの(例えばモンベル「クリマプラス200」、ファイントラック「ドラウトソル」など)とされ、人によっては「中厚手」になると思います。
登山用フリースにくらべれば、吸汗、速乾性能は当然劣りますが、予算を押さえたければ、ユニクロのフリースという選択肢もあります。(筆者は一時期、冬山にユニクロフリースを着用していました。)
ユニクロについては良い悪い、諸説ありますが、ベースレイヤーさえ汗冷えしづらい良い物を着用していれば、中間着にユニクロはありだと思います。
ユニクロを選ぶ場合は、当然ですが登山用として売っているわけではありませんので、生地の厚さやデザイン(前開き、中厚手のフリースが適当です)は自分の目でよく確認しましょう。
ズボンは?
ズボンですが、フリース素材などの温かいズボンを履くのが一般的ですが、厳しい寒さが予想されないのなら、夏山で履いているトレッキングパンツを流用しても良いでしょう。
ズボンの下にはメリノウールなどの温かい肌着を着用します。
肌着+ズボン+ハードシェル(またはソフトシェル)と3枚履くことになり、動きづらくなりますが寒冷下では仕方のないことです。
日帰り低山で気温が高い時には、厚手の肌着またはタイツ+ハードシェル(またはソフトシェル)の2レイヤーにする人もいます。
肌着(ベースレイヤー)
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肌着は防寒と汗冷え対策にとっては特に重要なものです。
肌着は肌に直接触れますので保温性、吸水性、速乾性が特に求められます。
生地はウール製、ポリエステル製、ウール・ポリエステル混紡などがあり、厚さは薄手~厚手まであります。(例~モンベルであれば、ウール製は「スーパーメリノウール」、ポリエステル製は「ジオラインシリーズ」)
冬山用には厚手か中厚手のものが適しています。
ウールとポリエステルを比較した場合、保温性はウールの方がやや高いですが、速乾性はポリエステルの方が優秀です。
筆者はメリノウールの中厚手を使用しており、以前は汗冷え防止のためにメリノウールの下に極薄のシルクTシャツを着用していましたが、最近になって、汗冷え改善のアイテムとして、いわゆる「ドライレイヤー(0.5レイヤー)」を着用するようになりました。
ドライレイヤー(0.5レイヤー)とは
「ドライレイヤー」とはベースレイヤーの下に着る(肌に直接着る)、薄いメッシュ系の汗冷え防止用のシャツのことで、「0.5レイヤー」などとも呼ばれます。
ファイントラックやミレーなどが有名で、ファイントラックのものは生地の撥水性により、汗を肌に残さないというもので、ミレーのものは、かさ高の編みシャツで汗を肌に残さないというものです。
どちらも大変評判がよく、オールシーズンを通して登山の汗冷え対策に注目されています。
ミレーとファイントラック、どっちがいいのかについての記事です→「登山の汗冷え。ミレードライナミックとファイントラックを比較!」
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防寒用セーター
行動中の大休止やテント生活の時には、アウターと中間着の間にセーターやフリースを着込んで寒さを防ぎます。
セーターやフリースは最低2枚は用意しなければ、厳冬期は寒くて眠れません。
厚さは、厚手かそれ以上の厚さのものが良いでしょう。
ここで言うセーターやフリースは防寒が目的であって、これを着て行動するわけではないので、吸汗速乾性能が優れていなくても大丈夫です。
温かくて、かさばり過ぎないものであれば、ユニクロでも十分です。
このほか、フリースだけでは寒さを凌げないような過酷な条件下では、ダウンジャケットを用意する場合もあります。
衣類(小物)
・目出し帽
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強風や吹雪、就寝時の防寒対策に必要です。ホームセンターに売っているものでも大丈夫です。
開口部から頭を出せばネックウオーマーとしても使用できます。
・ネックウオーマー
アマゾン [ミレー] ネットウォーマー ポーラ エルゴ ネック ゲイター
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襟元が寒い場合はネックウオーマーを使用します。ネックウオーマーはトップを絞れば帽子としても使用できるものもあり、非常に便利です。
こちらもホームセンターに売っているものでも問題ありません。
・帽子
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行動中はニット帽やフリースの帽子を被り、耳の凍傷を防ぎます。
※冬山の帽子考察~必ずしもニット帽、ネックウオーマー、目出し帽の3点をそろえる事はなく、工夫すれば色々な組み合わせが考えられます。
例えば、ニット帽と目出し帽の組み合わせで考えてみます。
あまり寒くない時はニット帽だけ被りますが、襟元が寒くなれば、目出し帽の開口部から頭を出し、目出し帽をネックウオーマーがわりにします。
- ニット帽と目出し帽のアレンジ
吹雪の時やテントで就寝する時は目出し帽で頭部をしっかり保温します。
- 目出し帽で頭部を保温
このような使い方をすれば、ニット帽、目出し帽の2点だけあれば、ほどんど用が足りるはずです。
ネックウオーマーをニット帽がわりにすれば、ネックウオーマーと目出し帽のセットでも同様の使い方が出来ます。
- ネックウオーマーと目出し帽のアレンジ
・オーバーミトン
アマゾン イスカ ウェザーテック オーバーミトン黒239101
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防風、防水用のグローブで、中綿は入っていません。
インナーグローブと合わせて使用します。
防水性がないナイロン製もありますが、ゴアテックスなどの防水透湿性のものにします。
裾が短いグローブもありますが、短いとラッセルや雪洞作りの時に雪が侵入しやすいので肘まである長いものが有利です。
オーバーミトンには、2本指や3本指のものがあり、3本指のものは人差し指が使える分、作業がしやすくなります。
作業性を重視するなら、オーバーミトンよりも5本指付きのオーバーグローブの方が使いやすいですが、保温性はオーバーミトンの方が格段に上です。
・オーバーグローブ
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オーバーミトンと同じく、防風、防水用のグローブです。
中綿は入っていませんのでインナーグローブと合わせて使用します。
保温性はオーバーミトンより劣りますが、厳しい寒さが予想されない山行なら、オーバーグローブは5本指なのでミトンよりも作業性が良いでしょう。
・インナーグローブ
アマゾン ファイントラック フラッドラッシュEXPグローブ
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フリース製や毛糸などのいわゆる普通の指付き手袋です。
オーバーミトンやオーバーグローブの下にはめます。
ユニクロやホームセンターに売っている普通のフリース手袋でも問題ありません。
・速乾性グローブ
アマゾン 礼装 用 フォーマル 紳士 白 手袋 ナイロン 100%
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素手じゃなければできない細かい作業をする場合、手の冷えや、濡れた手が金属などにくっついてしまうことを防止するため、速乾性素材(ナイロンやシルクなど)の薄い手袋を一番下にはめておくと便利です。
速乾性グローブは登山メーカーのものもありますが、筆者は安価なナイロン製白手袋を使っています。
ナイロン製白手袋なら作業用品店などでも販売されています。
※手袋の考察~手袋のレイヤリングは季節や山の標高などによって、組み合わせを自由に変えることになります。
一般的にはオーバーミトン(オーバーグローブ)+インナーグローブの2レイヤーや、オーバーミトン(オーバーグローブ)+インナーグローブ+速乾グローブの3レイヤーが多いと思いますが、人によっては4レイヤーにするなど様々です。
手袋のレイヤリングは凍傷防止のため、防寒と防水対策が重要なのですが、防寒性を高めると作業性が失われ、作業性を高めると防寒性が失われるといったことが起こります。
例えば、オーバーミトン+インナーグローブ+速乾グローブの3レイヤーでは、作業をするためにオーバーミトンを脱げは、インナーグローブが水濡れしてしまいます。
それなら、オーバーグローブ+インナーグローブ+速乾グローブの3レイヤーにして、オーバーグローブを脱がずに作業をすれば良いと思われますが、寒冷下ではオーバーグローブよりオーバーミトンの方が温かいと言えます。
解決方法のひとつとして、予備のインナーグローブを持って行き、インナーグローブが濡れたら取り替えるという方法もありますし、ゴアテックス仕様のインナーグローブをはめるという方法もあると思います。
中には、オーバーミトン+オーバーグローブ+インナーグローブ+速乾グローブの4レイヤーにして、作業をする時はオーバーミトンだけを脱ぐという人もいます。
インナーグローブは手汗などでも濡れてきますので、どのようなレイヤリングであっても、凍傷予防のために必ず複数の予備のインナーグローブを持参するようにします。
(ストーブなど火器を取り扱う場合は、軍手も必要です。)
・靴下
アマゾン ファイントラック メリノスピンソックス EXP
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アマゾン finetrack ドライレイヤーインナーソックス レギュラー
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薄手の靴下の上に、中厚手や厚手(ウールや毛糸など)の靴下を重ね履きするのが一般的です。
重ね履きの仕方は登山靴の大きさや防寒性能によって決まりますが、厚手1枚という人もいれば、薄手+厚手(中厚手)の2枚重ね、人によっては3枚重ねなど様々です。(筆者は防寒性の高いプラブーツを履いているので、ウール中厚手+シルク薄手の2枚重ねにしています)
足が寒くなくて、窮屈にならないのなら、どのような組み合わせ方でもかまいませんが、一番下の靴下は薄手で速乾性素材(ポリエステルやシルクなど)が快適です。
なお、泊を伴う登山の場合、靴下の濡れ対策として必ず予備の靴下を用意するようにします。
・ロングスパッツ(ゲイター)
アマゾン イスカ ゴアテックス ロングゲイターL(高さ40cm)
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登山靴に雪が入らないように膝下まであるロングスパッツ(ロングゲイター)を着用します。
(※ロングスパッツがいらない、ゲイター付き登山靴もあります。)
まとめ
今回の記事では、気温がー20℃程度まで下がることを想定して書きました。
低山ハイクでは、ここまでの服装は必要ないという場合もあると思いますが、低山でも道迷いなどによる凍傷や低体温症などの死亡事故はよくあることですので、服装の決定は慎重に行う必要があります。
また、服を購入する際は、冬山は日帰り低山だけと決めている人でも、徐々に活動範囲が広がっていくという場合も多々ありますので、最初から寒さに十分耐え得る服装を用意した方が、あとで買い足すよりも結果的に安く済む場合もあると思います。
冬山はどんなに寒くても歩いている時は温かく、汗をかくものですが、一旦立ち止れば厳しい寒さが襲ってきます。
レイヤリングはここで説明した限りではなく、人によって様々ですが、アクシデントで雪山で一晩過ごさなければならいようなことがあっても、低体温症や凍傷に耐え得るような服装を用意するのが基本になります。
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